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PLCのサイバーセキュリティ究極ガイド

Jul 16, 2024

PLCのサイバーセキュリティ究極ガイド

 

OTネットワークを攻撃にさらしてしまう可能性があるPLCのセキュリティ対策とは

今日のOT脅威の環境において、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)は、産業設備への容易なエントリーポイントを求める攻撃者にとって、新たな攻撃対象の1つとなっています。そこで、本記事ではPLCに確実に高度なサイバーセキュリティ対策を講じる方法について解説します。

 

PLCがサイバー攻撃の標的となる理由

PLCがサイバー攻撃者にとって魅力的な標的となる理由はいくつかあります。たとえば、多くのPLCは何十年も稼働しており、OTセキュリティの概念すら存在しない時代に構築されたため、セキュアなプロトコルが組み込まれていないことなどです。今では、PLCは業務システムや無線ネットワークとの接続がより一層進んでいるため、セキュリティ対策の欠如は産業環境にとって脅威となっています。

企業内では、OTセキュリティに対する一般的な理解が不足しているため、運用管理者やIT中心のセキュリティチームは、PLCがもたらす特有のリスクを十分に認識していない可能性があります。今の時代のPLCの設計者やプログラマーの間でも、OTセキュリティに対する意識は低いのが現状です。

PLCを保護するための専用ツールが限定的にしか利用できない点も問題でしたが、それは変わり始めています。OTセキュリティ全体に対するアプローチも同様で、OTセキュリティに対する関心が高まり、一般に知られるようになり、OTネットワークに対する攻撃がより攻撃的で被害が大きくなっているためです。

 

PLCのサイバーセキュリティとは

PLCの保護は、重要インフラを潜在的なサイバー脅威から保護するために不可欠です。PLCはサイバー攻撃に対して非常に脆弱であり、攻撃が成功した場合、オペレーションの中断や人命の危機など、深刻な結果をもたらす可能性があります。

PLCのセキュリティ対策には、堅牢なアクセス制御などの標準的な方法を採り入れなければなりません。ただし、強力な暗号化など、ITの標準的な推奨事項の多くは、OT環境では実装が困難です。また、OTでは、ソフトウェアの定期的な更新は、稼働環境を停止させてしまう可能性があるため、不可能ではないにしても非現実的です。

そこで、実行可能なサイバーセキュリティ代替手段は、仮想パッチです。これらのシステムの前にインラインIPS(侵入防御システム)を設置し、ネットワークをセグメント化して分離させることで、標準的なパッチ適用と同じ目標を達成することができます。

最新の効果的なサイバーセキュリティ戦略には、継続的な監視、脅威インテリジェンスの統合、従業員教育なども含まれています。これらの対策は、PLCの保護、ひいてはPLCが制御する重要な産業プロセスの保護を確実に行うために極めて重要です。

 

PLCの歴史

PLCの進化は、主に技術の進歩と産業界の需要が原動力となってきました。PLCは1960年代後半に、リレーベースの制御システムとして誕生しました。その後、1970年代にマイクロプロセッサが登場したことで急速に進化しました。

マイクロプロセッサの統合によりプログラマビリティが向上し、PLCは従来のリレーロジックシステムに代わる、産業オートメーションにより適した柔軟な選択肢となりました。

1980年代には、モジュール型およびラックマウント型のPLCが採用され、さまざまな用途に合わせて拡張性やモジュール性が加わりました。1990年代になると、PLCにはネットワーク機能が組み込まれ、デバイス間の通信、特に監視制御およびデータ収集(SCADA)システムとの統合が強化されるようになりました。21世紀に入ると、PLCはインダストリー4.0の原則を取り入れ、リアルタイム監視とデータ分析のためにIoT(モノのインターネット)やクラウドコンピューティングと統合されました。(もちろん、これらは今日PLCがより脆弱になっている理由になっています)

今日のPLCは、機能強化、高い処理能力、人工知能や機械学習の統合などの高度な機能を特徴としており、以前の世代のPLCに比べて比類のない制御能力を発揮します。この進化は、技術トレンドと、増え続ける最新の産業プロセスへの要求に継続的に適応してきたことの表れです。

 

PLCのサイバーセキュリティが重要な理由

産業システムの相互接続ネットワークへの依存度が高まる中で、PLCのサイバーセキュリティは極めて重要となっています。プログラマブル・ロジック・コントローラの侵害は、生産停止、安全上の問題、経済的損失など、壊滅的な結果につながる可能性があります

PLCを保護することで、重要なインフラの完全性を確保し、不正アクセスや不正操作から保護し、生産工程や場合によっては公共の安全性への潜在的な連鎖的影響を防止できます。産業のデジタル化が進むにつれ、リスクを軽減し、重要なプロセスの信頼性を維持するためには、PLCのサイバーセキュリティを優先させることが最も重要になります。

 

スタックスネット攻撃とは

2010年に発生したStuxnet(スタックスネット)PLC攻撃は、サイバー戦争の分岐点となる出来事でした。米国とイスラエルの共同作戦と広く考えられているスタックスネットは、イランの核施設、特にウラン濃縮プログラムを標的にしました。

このマルウェアは非常に巧妙で、Windowsオペレーティングシステムのゼロデイ脆弱性を悪用して産業用制御システム、特にシーメンスのプログラマブル・ロジック・コントローラ(PLC)に侵入しました。スタックスネットはひそかにPLCを操作し、遠心分離機を異常な速度で回転させることで、(表立った物理的な破壊を引き起こすことなく)最終的にイランの核開発計画を妨害しました。

スタックスネット攻撃は、スパイ活動、破壊工作、正確な標的設定をすべてデジタル領域内で融合させたサイバー兵器の威力と可能性を実証しました。この件の発覚で、重要インフラがサイバー脅威に対して脆弱であることが浮き彫りとなり、産業用制御システムにおける強固なサイバーセキュリティ対策の必要性に関して、世界的な認識を高めるきっかけとなりました。

 

TRITON/TRISIS攻撃とは

2017年に発見されたTRITON/TRISIS攻撃は、産業用制御システムを標的とするサイバー脅威が著しくエスカレートしたことを示すものでした。中東の石油化学プラントを狙ったこのマルウェアは、TRISISとも呼ばれ、特にSchneider ElectricのTriconex安全計装システム(SIS)を標的にしていました。

これまでのサイバーインシデントとは異なり、TRITONはスパイ活動や妨害だけでなく、プラントの安全システムを操作し、深刻な物理的リスクを引き起こすように設計されていました。攻撃者は、産業プロセスの安全な運用を保証する重要なコンポーネントであるTriconex SISを無効化しようとしました。

この前例のない攻撃は、世界中に驚きとともに伝えられ、安全システムが侵害された場合に壊滅的な結果をもたらす可能性があることが浮き彫りとなりました。TRITON事件は、重要インフラにおいてサイバーセキュリティ対策を至急強化する必要性があることを広く示し、世界中の企業に対して、ますます巧妙化する産業用制御システムへの脅威に対する防御戦略を改めて見直すよう警鐘を鳴らしました。

 

高度なPLCセキュリティ対策を講じる方法

PLCシステムで高度なセキュリティ対策を適切に講じるには、多面的なアプローチが必要となります。堅牢なアクセス制御を実装し、システムへのアクセスを許可された担当者に制限することが、PLCを潜在的なサイバー脅威から保護するためには不可欠です。

従来から、PLCセキュリティは、次の3つの主要なカテゴリーに分類されています。

  • 1) 脅威の検知と防止
  • 2) 通信プロトコルの保護
  • 3) アクセス制御と認証

ベストプラクティスには、潜在的な弱点(脆弱性)を特定するための徹底的なリスク評価を含めなければなりません。継続的な従業員教育も重要です。社内リソースが不足している場合は、サードパーティベンダーと協力することもできます。また、リアルタイム監視用として異常検知システムを取り入れることも必要です。そして、担当者があらゆる不正を特定し、迅速に対応できるような、用心深いサイバーセキュリティ文化を醸成することが重要です。

最終的に、リスク評価、ネットワークセグメンテーションや侵入防御などの技術的保護、そして十分な訓練を受けた従業員を組み合わせた包括的な戦略が、PLCシステムの高度なセキュリティ環境を乗り切るために不可欠となります。

 

脅威の検知と防止

PLCシステムを効果的に保護するには、堅牢な脅威検知と防止が不可欠です。脅威の検知と防止の例を6つ紹介します。

  • 1) 侵入検知および侵入防御システムを実装することで、不正アクセスや異常な活動を特定し、ブロックできます。
  • 2) リアルタイム監視により、潜在的な脅威に迅速に対応し、システムの侵害を防ぐことができます。
  • 3) 脆弱性を事前に特定するためには、定期的なセキュリティ監査と脆弱性評価が不可欠です。
  • 4) OTベースのファイアウォールとアクセス制御は、防御を強化し、不正なエントリーポイントを制限するために極めて重要です。
  • 5) 標準的なアップデートやパッチが非現実的な場合は、仮想パッチを適用します。
  • 6) 多くの誤解が一定数存在するため、従業員研修、または再研修を実施し、潜在的なセキュリティリスクを認識し、報告することができる注意深い従業員を確保します。

これらの戦術はそれぞれ、技術的安全対策、定期的な評価、および知識豊富なチームの採用を組み合わせるという、より大きな全体論的アプローチの一部であり、PLCシステムにとって不可欠な脅威の検知と防止の能力を発揮します。

 

アクセス制御と認証

OT環境では困難な場合もありますが、強固なアクセス制御と認証メカニズムを確立することは、PLCシステムを保護する上で非常に重要です。適切な認証とアクセスを確立して実装する方法には、次のようなものがあります。

  • 1) 厳格なユーザー認証プロトコルを実装することで、権限のある担当者のみが重要な設定項目にアクセスして変更できるようにします。
  • 2) ロールベースのアクセス制御により、権限をさらに細かく調整し、個人の役割に基づいて特定のタスクに制限します。
  • 3) 多くのデジタルメディアおよび技術メディアで普及している多要素認証は、ユーザーが複数の方法で身元を確認する必要があるため、セキュリティが強化されます。

これらの各対策は、PLCシステムを不正アクセスや潜在的なサイバー脅威から守るためのものです。このような対策を実施することで、PLCシステムのセキュリティを強化し、産業プロセスを不正操作や妨害から保護することができます。

 

PLCシステムをサイバーセキュリティの脅威から保護するための7つのベストプラクティス

産業プロセスがプログラマブル・ロジック・コントローラに大きく依存する時代においては、これらのシステムをサイバーセキュリティの脅威から保護することが最も重要です。進化するサイバー脅威に対して回復力(レジリエンス)を確保し、重要な生産工程の完全性を維持する、PLCシステムを強化するための7つのベストプラクティスを見ていきましょう。

 

1.継続的な監視と分析

継続的な監視と分析は、サイバーセキュリティの脅威からPLCシステムを保護するための基盤となるベストプラクティスとなっており、セキュリティや運用管理者は環境とその脆弱性を完全に可視化できます。より深く理解することで、管理者はより効果的なセキュリティ対策を実施できます。

また、リアルタイムの監視ツールは、異常や疑わしい活動を迅速に検知するため、即時対応が可能となります。この積極的なアプローチにより、企業は潜在的なセキュリティ侵害を特定し、迅速かつ効果的な軽減プロセスを構築することができます。理想的には、組み込みのIPS(侵入防御システム)が機能すれば、侵入を完全に防ぐことができます。

さらに、システムデータを継続的に分析することで、進化する脅威の状況に関する貴重な考察が得られ、堅牢なセキュリティ対策の実施が推進されます。完全な可視化、継続的な監視、分析を通じて継続的な警戒の文化を取り入れることで、PLCシステムのレジリエンスを強化し、動的で増え続けるサイバーリスクから保護を行うことができます。

 

2.効果的なパスワードポリシー

効果的なパスワードポリシーの導入は、PLCシステムをサイバーセキュリティの脅威から保護するためのもう1つの重要なベストプラクティスですが、現実のOT文化においては、パスワードの共有や工場出荷時のデフォルトパスワードの共有に依存している場合まであり、その実現が困難なことがあります。しかし、十分なトレーニングとセキュリティ問題への認識があれば、状況は改善されるはずです。

 

3.ネットワークセグメンテーション手法

ネットワークセグメンテーション手法は、ネットワークを特定のアクセス制御権限を持つ独立したセグメントに分割する方法です。そうすることで、潜在的な攻撃者がPLCシステムを攻撃しようとした場合、水平移動(ラテラルムーブメント)が複雑(攻撃展開が面倒)になります。

ネットワークをセグメント化することで、あるセグメントが侵害された場合でも、攻撃の拡散を封じ込め、他のPLCコンポーネントへの不正アクセスを防ぐことができます。

このアプローチは、攻撃対象領域を制限し、システム全体のレジリエンスを高めます。さらに、ネットワークのセグメンテーションにより、優先度の高いセグメントにセキュリティ対策を集中させることができ、リソースを効率的に割り当てることができます。

ネットワークセグメンテーション手法は、通信経路を分離することで、ラテラルムーブメント、不正アクセス、および妨害などのリスクを効果的に軽減し、PLCシステムの完全性と機能を保護します。

 

4.侵入防御システムの活用

侵入防御システム(IPS)の活用は、サイバーセキュリティの脅威からプログラマブル・ロジック・コントローラシステムを保護するのに役立ちます。IPSは、ネットワークとシステムの活動を継続的に監視し、不正アクセスや悪意のある活動を示す異常なパターンや振る舞いを特定します。ネットワークトラフィックとシステムログをリアルタイムで分析することで、IPSは潜在的な脅威を迅速に特定し、警戒監視の役割を果たします。

異常を検知すると、IPSはアラートの発動や、脅威を軽減するための自動アクションを実施し、PLCシステムに対する不正アクセスや改ざんを防止できます。このプロアクティブな防御メカニズムは、追跡不可能なサイバー脅威に対して迅速対応を可能にすることで、PLCシステムのレジリエンスを高めます。

 

5.セキュアなリモートアクセスのプロトコル

セキュアなリモートアクセスのプロトコルは、リモート接続を最高レベルのセキュリティで確立して維持することで、PLCシステムをサイバーセキュリティの脅威から保護します。

仮想プライベートネットワーク(VPN)やセキュアシェル(SSH)などのプロトコルは、送信中のデータを暗号化し、傍受や改ざんから守ります。これらのプロトコルは、セキュアなトンネルを確立することにより、リモートユーザーとPLCシステム間で保護された通信チャネルを構築します。

さらに、セキュアなアクセスソリューションには、認証手段が組み込まれていることが多く、ユーザーは入室前に、認証情報や多要素認証を用いて身元を証明しなければなりません。これらのプロトコルを導入することで、PLCシステムの完全性を損なうことなく、リモート監視とメンテナンスが可能になります。

 

6.OTゼロトラストフレームワークの実装

運用制御技術(OT)ゼロトラストフレームワークの実装は、PLCシステムをサイバーセキュリティの脅威から保護するための最も重要な対策と言えるでしょう。従来の境界ベースのセキュリティモデルと異なり、ゼロトラストのアプローチでは、ネットワーク内の信頼を前提とせず、ユーザーのIDとデバイスの継続的な検証が必要です。

このフレームワークは、PLCシステムにアクセスしようとするデバイスとユーザーに、継続的な認証、承認、検証を求めることで、攻撃対象領域が縮小します。ネットワークマイクロセグメンテーションは、重要なコンポーネントを分離し、潜在的な攻撃者のラテラルムーブメントを制限します。

リアルタイムの監視と異常検知は、脅威を迅速に特定し対応するのに役立ちます。このプロアクティブなモデルは、ある側面が侵害された場合でも、システム全体のセキュリティが損なわれないようにするものです。OTゼロトラストフレームワークは、包括的で多層的な防御手法を促進すると同時に、動的で適応性の高いセキュリティ体制を確保することで、リスクを軽減します。

 

TXOneを用いたPLCネットワークの保護

産業用制御システムの進化する状況において、TXOneを用いれば、PLCネットワークを保護し、サイバー脅威に対する防御を強化できます。

TXOneの包括的なサイバーセキュリティソリューションは、高度な脅威検知メカニズム、堅牢なアクセス制御、セキュアな通信プロトコルを活用することで、プログラマブル・ロジック・コントローラのネットワークの完全性と信頼性を優先します。

TXOneは、継続的な監視や定期的なセキュリティ評価などの事前対策を重視し、不正アクセス、改ざん、潜在的な妨害に対するレジリエントな防御策を講じます。

TXOneを選択すれば、PLCネットワークが保護されるだけでなく、それが管理する重要な産業プロセスまで保護され、かつてないこのサイバー犯罪の時代に、優れた安心感が得られます。

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