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OTとは?意味、ITとの違い、導入事例、セキュリティ対策までわかりやすく解説

Apr 19, 2024

OTとは?意味、ITとの違い、導入事例、セキュリティ対策までわかりやすく解説

本記事では、近年注目されている「OT(Operational Technology)」について、基本的な定義からITとの違い、具体的な産業用制御システム例、OTセキュリティの重要性、そしてOTセキュリティ関する最新トレンドや将来展望までをわかりやすく解説します。製造業、重要インフラ産業、交通システムなど、様々な分野で活用されているOTへの理解を深め、今後のOTセキュリティの実施検討に役立てください。

 

 

OT(Operational Technology)とは?

OTとは、オペレーショナルテクノロジー(Operational Technology)の略であり、工場や発電所、交通インフラといった、社会インフラにおいて必要となる物理的な設備やプロセスを監視・制御するための技術を意味しています。

OTを導入する目的は、製造現場の装置制御やインフラ設備の運用管理など、現実世界の動作を正確にコントロールし、安全性と効率を確保することです。

現在の産業用制御システムは、DX化の進展に伴いリモート監視やデータ活用といった新たな活用領域にも拡張し、産業活動のさらなる高度化を支える重要な基盤となっています。

一方で似た意味を持つ概念として、ICS(産業用制御システム)があります。
これは産業プロセス制御に用いられる制御システムを指します。OTは技術であることに対して、ICSは、Industrial Control Systemの略であり、OT技術が適用されるシステムです。
これらの制御システムにはPLCや、DCS、SCADAも含まれます。OTは半導体業界、自動車業界を始めとした製造業から、製薬業界、重要インフラ業界など様々なシーンで利用されています。

 

OTの定義をわかりやすく解説

OTとは、工場や発電所、交通インフラなどの物理的な機器やプロセスを監視・制御するための技術の総称です。

対象となるのは、製造現場の装置制御やインフラ設備の運用管理など、物理世界の動作をコントロールする産業用制御システムです。

例えば、製造ラインのロボットアームの制御、発電所のタービン監視、電車の信号システムなどにOTが活用されており、社会インフラや産業設備の運用に不可欠な役割を担っています。

OTは現実世界の安全・効率を守るために欠かせない技術であり、私たちの暮らしや産業活動を支えています。

 

産業用制御システム(ICS)の登場背景と歴史

産業用制御システム(Industrial Control System)は、工場や発電所、交通インフラなど産業現場の自動化と効率化を実現するために発展してきました。

当初、産業現場の設備や機器はリレー回路による物理的なスイッチングで制御されていましたが、設備の大型化・複雑化に伴い、配線の煩雑さやメンテナンス負荷の増大、故障率の上昇といった課題が顕在化しました。

これらの課題を解決するために開発されたのがPLC(Programmable Logic Controller)です。PLCの導入によってプログラムによる制御変更が可能となり、柔軟性と保守性が飛躍的に向上しました。これが産業用制御システム普及の大きなきっかけです。

PLCのサイバーセキュリティ究極ガイド
  

PLCのサイバーセキュリティ究極ガイド

OT脅威の環境において、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)は、産業設備への容易なエントリーポイントを求める攻撃者にとって、新たな攻撃対象の1つとなっています。そこで、本記事ではPLCに確実に高度なサイバーセキュリティ対策を講じる方法について解説します。

その後も産業用制御システムは、「安全・安定・効率的な運用」を支える技術として進化を続け、近年ではDX化により、リモート監視やデータ活用といった新たな領域にも広がりを見せています。

 

OTとITの違いとは?

OTとITの違いについて、技術の目的、システムのライフサイクル、データの重要性の3点から解説します。

OT IT
目的 物理的な装置やプロセスを操作・制御する データや情報を処理・活用しビジネス価値を高める
システムのライフサイクル 長期にわたる安定稼働が求められる ビジネス環境の変化に応じて数年ごとの頻繁な更新・刷新を行う
データの重要性 データの可用性と整合性が重視される 機密性が最優先される

 

目的の比較

OTとITは、技術の目的が大きく異なります。

OTの目的は、工場やインフラ機器など、物理的な装置やプロセスを操作・制御することです。

一方、ITはデータや情報を処理し、効率的な活用や分析によるビジネス価値の向上を目的としています。

このように、OTは物理的な操作・制御を、ITは情報処理をそれぞれの中心的な目的としている点が、両者の本質的な違いです。

 

システムのライフサイクルの比較

ITシステムは、技術進歩やビジネス環境の変化に応じ、短いサイクルで頻繁に更新・刷新されるのが一般的です。

一方、産業用制御システムに求められるのは安定性です。制御システムは一度設置されると、10年以上継続使用されることも珍しくなく、更新はコストや稼働リスクを考慮して慎重に判断されます。

このように、ITシステムが変化への迅速対応を重視した短期サイクルで運用されるのに対し、産業用制御システムは安全性と安定稼働を最優先した長期運用が特徴です。

 

データの重要性の比較

ITシステムと産業用制御システムでは、データに対する重視点にも違いがあります。

ITシステムでは、個人情報や企業機密といった重要情報を守るため、データの機密性が最も重視されます。そのため、アクセス制御や暗号化、認証といった対策が中心です。

一方、産業用制御システムでは、生産ラインや発電設備など現場の安定稼働を支えるため、データの可用性と整合性が重要視されます。常に正確なデータに基づいて設備を稼働させる必要があり、システム停止やデータ改ざんは重大な事故や損失につながるためです。

このように、ITシステムは「情報の秘匿性」を、産業用制御システムは「データの確実な利用と正確性」をそれぞれ最優先に設計されている点が、両者の大きな違いです。

 

産業用制御システムの例

OTとは、製造業、エネルギー産業、交通分野など幅広い領域で社会インフラを支える技術です。

製造業では生産ラインの自動化や設備監視、エネルギー産業では発電所運転管理や電力網制御、交通分野では、鉄道運行管理や航空管制などに導入されています。

ここでは、それぞれの分野における産業用制御システムの例を紹介します。

 

製造業における産業用制御システムと導入事例

製造業では、産業用制御システムが生産現場の効率化と安定稼働を支えています。

代表的な例が、工場における生産ラインの自動化です。組み立てや検査、搬送といった従来人の手で行われていた作業は、ロボットアームや自動搬送装置により自動化されています。それらを統合的に管理・監視するために導入されるのが産業用制御システムです。

例えば自動車工場のボディ組み立てラインでは、産業用制御システムを導入することで各種設備の状態をリアルタイムに可視化するとともに、異常時には即時対応できる仕組みが整備されています。

食品工場や電子機器製造ラインにおいても、温度や湿度の管理、組み立て精度の制御、品質検査の自動化といった領域で産業用制御システムは不可欠です。

産業用制御システムは生産性向上に加え、安全性の確保、製品品質の安定化、トレーサビリティーや予知保全の推進にも大きく貢献しています。

 

エネルギー産業における産業用制御システムと導入事例

エネルギー産業においても産業用制御システムは社会インフラを支える基盤として不可欠な存在です。

例えば発電所では、運転状況や出力、温度、圧力をリアルタイムで監視し、安定運用を行わなければなりません。そのためOT技術を用いて設備を一元管理し、異常時には即座にアラートを発する体制が整備されています。

また、電力網におけるOT活用も重要です。送電線や変電所など広域に分散するインフラの設備状況を常時監視・制御し、需給バランスをリアルタイムで調整するため、電力会社ではSCADAシステムを中核に据えた運用体制を構築しています。

再生可能エネルギーの普及に伴う電力供給の変動リスクに対応するため、高精度な監視・制御の重要性が一層高まっています。

 

交通システムにおける産業用制御システムと導入事例

鉄道業界においても、産業用制御システムは安全で効率的な運行を支える中核的存在です。

鉄道業界では、定時運行と運行の安全性向上を目的として、列車の位置や速度、運行スケジュールをリアルタイムで管理するシステムが導入されています。

また、航空業界においても、空港では航空管制官がレーダー情報やフライトスケジュールをリアルタイムで監視し、離着陸および地上走行を安全かつ円滑に管理しています。産業用制御システムは航空機の現在位置や気象情報を即座に把握し、最適な指示を可能にするインフラです。

交通分野における産業用制御システムは、運行の安全性確保、効率的な運行管理、そしてサービス品質向上に欠かせない技術基盤となっています。

 

OTの最新トレンド

産業用制御システムはIoTやAI、クラウドとの連携が加速し、大きな進化を遂げました。また、2024年はOT領域におけるセキュリティ対策の強化が大きく進展した年でもあります。

ここでは、データ活用の高度化とともに、最新のOTセキュリティ動向について解説します。

 

IoT、AI、クラウドなどの技術との融合

近年、産業用制御システムは、IoT、AI、クラウドといった先端技術と融合し、大きな進化を遂げています。

工場や発電所では、IoT技術によってセンサーから稼働データや環境データをリアルタイム収集し、故障兆候の検知や設備稼働率の最適化が進められています。

ここで整理しておきたいのがOTとIoTの違いです。OTは現場制御を、IoTはデータ収集・活用を担う技術であり、両者の連携によって予知保全や生産性向上が実現されています。

さらに、AIやビッグデータ解析により、異常予兆の検出やメンテナンス時期の予測、生産プロセスの最適化が可能となりました。

クラウド技術との連携も進み、従来は現場に閉じていた産業用制御システムが遠隔監視や複数拠点の統合管理を実現し、リアルタイムな経営支援に寄与しています。

OTは単なる現場制御を超え、データ活用による高度な運用と意思決定支援を担う領域へと進化しつつあります。

IT/OTの統合化がもたらす危機:OT/ICSサイバーセキュリティレポート 2023
  

IT/OTの統合化がもたらす危機:OT/ICSサイバーセキュリティレポート 2023

OT/ICSサイバーセキュリティレポートでは、TXOne NetworksがFrost&Sullivanと協力して2023年に収集したデータを分析し、現代の産業用制御システム(ICS)とオペレーショナルテクノロジー(OT)を取り巻く脅威動向の変化についてまとめています。

今後、ITとOTが統合することで、懸念されるのは、ITセキュリティインシデントがOT環境におよぼす影響です。

以下の図2で示すように、OT環境に影響がおよぶITインシデントを経験した企業は世界では97%にのぼり、2022年の94%から増加しています。

図2:OTに影響をおよぼすIT/OTの統合(参照:OT/ICSセキュリティレポート2023)

図2:OTに影響をおよぼすIT/OTの統合(参照:OT/ICSセキュリティレポート2023

つまり、これは、通常ITシステムに関わるサイバーセキュリティリスクに、OT環境が大きくさらされていることを意味しています。OTネットワークを隔離し続けている企業はわずか23%であり、より高度な、またはよりリスク許容度が高いセキュリティアプローチに移行していることがわかります。

これらの結果から、企業はIT環境とOT環境の両方で堅牢なサイバーセキュリティ対策に投資することが極めて重要であることがわかります。

ITとOTが高度に統合されている場合、サイバーセキュリティに対しては包括的なアプローチが必要になります。
ここには、定期的なリスク評価と積極的な軽減戦略が含まれます。IT-OTサイバーセキュリティにおけるグローバルな標準と対策から学び、業界や地域をまたいだコラボレーションを進めていくことが、このような統合されたネットワークの課題を解決する鍵となるかもしれません。

 

データ分析による業務効率化と高度化

産業用制御システムにおけるデータ活用は、近年大きく高度化しています。

従来は設備や機器の運転状況をリアルタイムで監視・制御することが主目的でした。しかし、現在では蓄積データの分析を通じて業務の効率化や運用最適化が進められています。

製造業をはじめ、エネルギー管理や物流分野でも、産業用制御システムのデータ解析により予知保全、品質・生産性向上、コスト削減といった効果が広がっています。

産業用制御システムは単なる監視・制御の枠を超え、現場の効率化とビジネス価値向上を推進する重要な基盤へと進化しているといえるでしょう。

 

セキュリティ対策の重要性と進化

産業用制御システムは従来クローズドな環境で運用されていたため、サイバー攻撃への備えは十分とは言えませんでした。しかし、IoTやクラウドとの連携が進む中で外部接続が増加し、サイバーリスクが急速に高まっています。

製造業を中心に深刻な脅威となった産業用制御システムへの攻撃に対し、稼働停止リスクやレガシー機器の課題を踏まえたネットワークセグメンテーションやゼロトラストなどの対策が急速に広がっています。

今後、産業用制御システムのさらなるデジタル化に伴い、堅牢なサイバーセキュリティ対策の構築は不可欠な要件となるでしょう。

 

OTの将来展望

OTは将来的に、自動運転やスマートシティなど、新たな分野への応用が期待されています。また、人材の需要の増加が見込まれているため、企業にはセキュリティ担当者のスキルアップを支援する取り組みも求められるでしょう。

ここでは、OTの将来展望について詳しく解説します。

 

自動運転やスマートシティなど、新たな分野への応用

産業用制御システムは、従来から製造業、エネルギー、交通インフラなどさまざまな分野で活用されてきました。今後はさらに幅広い領域への応用が期待されています。

例えば自動運転やスマートシティでは、インフラ側のリアルタイム情報提供や現場機器の制御に産業用制御システムが活用され、安全性向上や都市機能の最適化に貢献しています。

このように、産業用制御システムはモビリティの進化や都市機能のスマート化を支える中核技術として、今後さらに重要性を高めていくでしょう。

 

OT人材の需要増加とスキルアップの必要性

産業用制御システムの活用が拡大する中、これを支える専門人材の需要も急速に高まっています。

産業用制御システムの高度化に伴い、技術者には制御・保守に加え、ネットワークやセキュリティ、データ活用、IT連携などの幅広いスキルが求められるようになるでしょう。企業は、スキルギャップを埋める教育体制を整備しなければなりません。

今後のOT分野では、「現場を知る技術者」と「デジタル技術に強いエンジニア」双方のスキルを兼ね備えたハイブリッド人材が、より一層重要な役割を果たしていくでしょう。

 

まとめ

OTは、製造業、エネルギー、交通など、社会の基盤を支える重要な技術です。近年では、IoTやAI、クラウドとの連携によって、単なる現場制御を超えた高度な運用・データ活用が求められる時代に入りました。

また、サイバーセキュリティ対策の重要性が高まり、OT分野においてもデジタルリテラシーと現場知識を兼ね備えた人材の育成が不可欠となっています。

OTへの理解を深めることは、単に技術トレンドを把握するだけでなく、今後のビジネスの進化を支える重要な基盤づくりにつながります。

 

 

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